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中年の心の闇〜万引きをする大人たち〜 (2004.07.28 Wednesday) [いんちき心理学講義] |
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●戦後少年の凶悪犯罪
昨今では「体感治安」という言葉が流行りだそうです。試しにGoogleで検索したところ4430件も引っかかりました。何やら、少年犯罪はかつてとは「質」が違い、特に手口の凶悪性や残虐性が悪化し、常人には理解できない不可解さが増しているそうです。
●少年の強盗が増加している?
前回では、「少年犯罪が凶悪化している!」というマスコミの世論を尻目に、本当に凶悪な50代の研究をしましたが、最後に近年の強盗の数が凶悪犯罪が頻繁した昭和35年付近と同等にまで増えている表を掲載しました。
このことから、近年の青少年は命を奪う殺人から実利目的の強盗に犯罪領域がシフトしたと思われるでしょうが、実際はそうではありません。
この急増している強盗の内訳を見ると、単純強盗や手口の凶悪な「強盗致死」や「強姦強盗」の数は増加していません。顕著に増加しているのは「強盗致傷」の類です。
これはどういうことかというと、実は警察庁長官が1997年6月3日の全国警察少年担当課会議で「悪質な非行には厳正に対処、補導を含む強い姿勢で挑む」と述べたことが関係しています。
その発言を受けた警察庁は、8月に「少年非行総合対策推進要綱」を制定し、少年犯罪の捜査比率を上昇させ、少年を検挙する場合でも、より重い罪名で検挙することを決定しました。
例えば、数年前に流行った「たまごっち狩り」少年や「スニーカー狩り」少年は強盗の範疇に入れられていますし、寺尾史子の調査では、19歳の少女がCDを万引きした際に見咎めた店員を突き飛ばして逃げたのを「強盗致傷」として検挙していたということが判明しています。
要するに、今までならば「窃盗」で検挙していた犯罪を「強盗」として検挙しているから、一見増加したように見えるだけなのです。強盗のグラフを見れば、1997年から急増していることが分かります。
●本当に増加している「凶悪」犯罪
ちなみに、一般犯罪の傾向を見ると、最近の少年が狡猾になっているというのに幻想だということが分かります。詐欺のピークは戦後すぐの時期で1950年には6368件も検挙されていますが、2002年度では590件と1/10です。昨今の少年は人を騙したりしないのです。みんな正直でいい奴です。
しかし、こういったトリックを使わなくとも、純粋に急増していると言える犯罪が一つだけあります。「横領」です。
というのは冗談で、ここで言う横領とは「占有物離脱横領」のことで要するに自転車泥棒です。落ちているお金をネコババすることもここに含まれますが、実際に逮捕されるようなことはまずないので、とりあえず除外。他には、コンビニでアルバイトをしている少年がレジから失敬するのも横領に含まれます。
では、ここで一般犯罪も含めた少年犯罪のグラフを掲載しましょう。
窃盗と横領は数が多すぎて同時に掲載すると把握し難くなるので掲載していません。
このグラフを見れば分かるとおり、横領が急激に増加していることを除くと、一般の犯罪も過去に比べて増えてはいません。というか全体としては減少傾向にあります。
つまり、「凶悪な少年犯罪が増加している」というセリフは「自転車泥棒という凶悪な犯罪が増加している」と言うことを意味します。何故なら横領(自転車泥棒)以外に急激に増加している犯罪は存在しませんので、必然的にそう発言していることになります。自転車泥棒は凶悪な犯罪だったのです。
自転車泥棒が立派な犯罪であることに疑いの余地はありませんし、確かに仕事で疲れて会社から帰ろうと思ったところで自転車がなくなっていたら激怒して「凶悪犯罪だ!」と叫びたくなる気持ちも分かります。
ところで、横領に分類される自転車泥棒は道端に放置されるものだけに限定されます。駐車場に置かれている自転車泥棒は横領ではなく窃盗に分類されるからです。そして窃盗の数は増加していないところから、急増している自転車泥棒のほとんどは道端に放置されている、そして大抵は違法駐車であろう自転車だけを狙っていると考えられます。
つまり、正確には大人たちはこう叫んでいるのです。「俺たちが安心して違法駐車するために少年法を厳罰化しろ!」と。こういう人を表すのにピッタリな言葉を知っています。「盗人猛々しい」です。
●心の痛みを知らない大人たち
犯罪のグラフでは面白いものがあります。万引きです。
少し前に万引きした少年を追いかけた店長が深追いをしすぎたために歩道に飛び出した少年が車に轢かれて死亡したという事件がありました。逆に万引き犯を追いかけた男性が車にはさまれて死亡するという事件も発生しました。
特に本屋にとっては万引きは深刻です。全国の本屋の被害総額は年間で200億円ほどに達します。
1970年の万引き発生件数は約5万件ほどでしたが、2002年度には10万件を突破しています。2倍もの増加数です。こういった数を知ると。心の教育が叫び、人の痛みを知らず現実感を失った子どもたちが万引きを繰り返しているというマスコミや世論の声にうなづきたくなると思います。
ところで次のグラフを見てください。
ここで疑問に思った人がいると思います。あれ?万引き件数は2倍以上に増えたんじゃないのか?と。
その疑問に解消するために次のグラフを掲載しましょう。
さて、このデータは一体何なのかというと、少年を除いた成人の万引き検挙人数です。少年の万引き人数に大して変化が無いのに比べ、成人の万引き発生件数は10年間で2倍に増加しています。
1966年では子どもと大人の万引き数にほとんど差異がないのに比べて、現在では20000件も差がついているのもポイントです。中年の心の闇は近年特有のものです。心の教育が足りなかったのでしょう。万引きに悩まされているお店の店長は、子どもよりも大人の動向に注目するべきです。
40年前と比べた場合、子どもの発生件数が1.5倍なのに対して、成人の発生件数は2.5倍です。現在の万引き総数を底上げしているのは少年ではなく大人でした。子どもに心の教育を行う前に大人に心の教育を行ったほうがよさそうです。
関連:中年の心の闇〜大人たちに何が起きているのか〜
参考:少年犯罪データベース ノンフィクションで見る戦後犯罪史
昨今では「体感治安」という言葉が流行りだそうです。試しにGoogleで検索したところ4430件も引っかかりました。何やら、少年犯罪はかつてとは「質」が違い、特に手口の凶悪性や残虐性が悪化し、常人には理解できない不可解さが増しているそうです。
今から40年も前の昭和33年、日本がまだ貧しく、日々の暮らしに追われていた頃、当時の人々を震撼させた事件がありました。それが小松川女子高生殺し事件です。報道機関に女子高生を殺し捨てた旨を伝える電話、高校屋上スチーム管暗きょの中で腐乱死体で発見、葬儀の最中に郵送された被害者のクシ、更に新聞社に「オレが真犯人だ。オレがやったのは計画的な完全犯罪だ。もう1人殺している」との犯行声明、そして逮捕されたのは18歳の定時制高校の少年。その少年は取調にいたって冷静、「いまだに少女を殺してしまったような気はしない」と述べながら犯行を自供。一部報道機関が少年を実名報道、そして・・・・・。昭和33年の事件なのに、酒鬼薔薇聖斗とデジャヴー。あれって現代社会の歪みから出た犯罪ではなかったのでしょうか。
少年犯罪データベース 小松川女子高生殺人事件
神奈川県座間町の山中、銃の禁止区域内でライフルを発砲していた少年K(18)を職務質問しようとしたT巡査(21)が、ライフルで撃たれて死亡。「おどかすつもりでライフルを右に振りながら引き金を引いたら、引くのが早すぎて当たってしまった」との供述が残されている。Kは巡査から警察手帳、拳銃、制服、ズボンを奪って警官になりすます。発砲後、まもなくパトカーで駆けつけたT巡査(27)、S巡査(23)がパトカーから降りた瞬間、Kは両巡査に発砲して逃走。S巡査は重傷、T巡査はバンドの留め金に弾が当たったため奇跡的に無傷であった。こちらは昭和40年事件です。好きな銃を思いっきり撃ってスカっとしてますよ。
その後Kは人質を取って車で逃走、銃砲火薬店に人質4人を取って立て籠もり、銃を乱射。警察からの催涙弾で、二人を盾にして外に出てきたところを逮捕される。警官隊との市街戦で16名が重軽傷を負った。Kは警察の調べに「好きな銃を思いっきり撃ってスカッとした」と供述した。
少年であったことから、一審無期懲役判決。しかし、K自身が「銃への魅力は、今なお尽きない。将来社会へ出て、再び多くの人に迷惑を掛けることのないように、死刑にしてほしい」と主張したためか、二審で死刑判決。1969年、死刑確定。1972年、死刑執行。享年25。
少年ライフル魔事件
昭和38年3月から翌39年10月にかけて東京都杉並区を中心に小さな男の子に対する傷害・暴行事件が11件連続して発生した。そして何人かの被害者は、ズボンや下着を脱がされて局部をいたずらされたうえ刃物でそこを切り裂かれており、「通り魔事件」として子を持つ親から恐れられた。中学生の身でありながら、伝説の切り裂きジャックの再現です。昭和38年です。
しかも犯人は昔、ロンドン中を震え上がらせた切り裂きジャックの名前で被害者宅や警察署にまで脅迫状を送りつづけた。
犯人は恵まれた家庭の成績優秀な都立高校2年生(17歳。最初の犯行時は15歳の中学生)だった。
杉並少年通り魔事件
●少年の強盗が増加している?
前回では、「少年犯罪が凶悪化している!」というマスコミの世論を尻目に、本当に凶悪な50代の研究をしましたが、最後に近年の強盗の数が凶悪犯罪が頻繁した昭和35年付近と同等にまで増えている表を掲載しました。
このことから、近年の青少年は命を奪う殺人から実利目的の強盗に犯罪領域がシフトしたと思われるでしょうが、実際はそうではありません。
この急増している強盗の内訳を見ると、単純強盗や手口の凶悪な「強盗致死」や「強姦強盗」の数は増加していません。顕著に増加しているのは「強盗致傷」の類です。
これはどういうことかというと、実は警察庁長官が1997年6月3日の全国警察少年担当課会議で「悪質な非行には厳正に対処、補導を含む強い姿勢で挑む」と述べたことが関係しています。
その発言を受けた警察庁は、8月に「少年非行総合対策推進要綱」を制定し、少年犯罪の捜査比率を上昇させ、少年を検挙する場合でも、より重い罪名で検挙することを決定しました。
例えば、数年前に流行った「たまごっち狩り」少年や「スニーカー狩り」少年は強盗の範疇に入れられていますし、寺尾史子の調査では、19歳の少女がCDを万引きした際に見咎めた店員を突き飛ばして逃げたのを「強盗致傷」として検挙していたということが判明しています。
要するに、今までならば「窃盗」で検挙していた犯罪を「強盗」として検挙しているから、一見増加したように見えるだけなのです。強盗のグラフを見れば、1997年から急増していることが分かります。
●本当に増加している「凶悪」犯罪
ちなみに、一般犯罪の傾向を見ると、最近の少年が狡猾になっているというのに幻想だということが分かります。詐欺のピークは戦後すぐの時期で1950年には6368件も検挙されていますが、2002年度では590件と1/10です。昨今の少年は人を騙したりしないのです。みんな正直でいい奴です。
しかし、こういったトリックを使わなくとも、純粋に急増していると言える犯罪が一つだけあります。「横領」です。
というのは冗談で、ここで言う横領とは「占有物離脱横領」のことで要するに自転車泥棒です。落ちているお金をネコババすることもここに含まれますが、実際に逮捕されるようなことはまずないので、とりあえず除外。他には、コンビニでアルバイトをしている少年がレジから失敬するのも横領に含まれます。
では、ここで一般犯罪も含めた少年犯罪のグラフを掲載しましょう。
窃盗と横領は数が多すぎて同時に掲載すると把握し難くなるので掲載していません。
このグラフを見れば分かるとおり、横領が急激に増加していることを除くと、一般の犯罪も過去に比べて増えてはいません。というか全体としては減少傾向にあります。
つまり、「凶悪な少年犯罪が増加している」というセリフは「自転車泥棒という凶悪な犯罪が増加している」と言うことを意味します。何故なら横領(自転車泥棒)以外に急激に増加している犯罪は存在しませんので、必然的にそう発言していることになります。自転車泥棒は凶悪な犯罪だったのです。
自転車泥棒が立派な犯罪であることに疑いの余地はありませんし、確かに仕事で疲れて会社から帰ろうと思ったところで自転車がなくなっていたら激怒して「凶悪犯罪だ!」と叫びたくなる気持ちも分かります。
ところで、横領に分類される自転車泥棒は道端に放置されるものだけに限定されます。駐車場に置かれている自転車泥棒は横領ではなく窃盗に分類されるからです。そして窃盗の数は増加していないところから、急増している自転車泥棒のほとんどは道端に放置されている、そして大抵は違法駐車であろう自転車だけを狙っていると考えられます。
つまり、正確には大人たちはこう叫んでいるのです。「俺たちが安心して違法駐車するために少年法を厳罰化しろ!」と。こういう人を表すのにピッタリな言葉を知っています。「盗人猛々しい」です。
●心の痛みを知らない大人たち
犯罪のグラフでは面白いものがあります。万引きです。
少し前に万引きした少年を追いかけた店長が深追いをしすぎたために歩道に飛び出した少年が車に轢かれて死亡したという事件がありました。逆に万引き犯を追いかけた男性が車にはさまれて死亡するという事件も発生しました。
特に本屋にとっては万引きは深刻です。全国の本屋の被害総額は年間で200億円ほどに達します。
1970年の万引き発生件数は約5万件ほどでしたが、2002年度には10万件を突破しています。2倍もの増加数です。こういった数を知ると。心の教育が叫び、人の痛みを知らず現実感を失った子どもたちが万引きを繰り返しているというマスコミや世論の声にうなづきたくなると思います。
ところで次のグラフを見てください。
ここで疑問に思った人がいると思います。あれ?万引き件数は2倍以上に増えたんじゃないのか?と。
その疑問に解消するために次のグラフを掲載しましょう。
さて、このデータは一体何なのかというと、少年を除いた成人の万引き検挙人数です。少年の万引き人数に大して変化が無いのに比べ、成人の万引き発生件数は10年間で2倍に増加しています。
1966年では子どもと大人の万引き数にほとんど差異がないのに比べて、現在では20000件も差がついているのもポイントです。中年の心の闇は近年特有のものです。心の教育が足りなかったのでしょう。万引きに悩まされているお店の店長は、子どもよりも大人の動向に注目するべきです。
40年前と比べた場合、子どもの発生件数が1.5倍なのに対して、成人の発生件数は2.5倍です。現在の万引き総数を底上げしているのは少年ではなく大人でした。子どもに心の教育を行う前に大人に心の教育を行ったほうがよさそうです。
| ・昔の少年は手口も凶悪でした。 ・本当は少年強盗も増加していません。 ・急増している犯罪とは自転車泥棒のことです。 ・子どもに心の教育を施す前に、大人に心の教育を義務付けましょう。 |
関連:中年の心の闇〜大人たちに何が起きているのか〜
参考:少年犯罪データベース ノンフィクションで見る戦後犯罪史
