虚構はしょせん虚構に過ぎない。だが虚構を求める人々の心は「真実」だ
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世界の教科書が映す『日本』 (2004.08.28 Saturday) [いんちき心理学講義]
 ●海外の教科書
 みなさんは「社会の教科書」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?一時期「新しい歴史教科書問題」などがあり、それによってイメージが大幅に変化した人もいるかもしれませんが、大方の人は教科書にある程度の信頼性があると考えています。
 しかし、日本の教科書はともかく、海外の教科書における日本を見ると「何だコリャ」と思うものが少なくありません。今回は各国の教科書と日本に関する記述を見ていきましょう。

 ▼各国の教科書傾向
 社会の教科書にどのような内容を盛り込むかは、国ごとに大きく異なります。

 アメリカ:開拓者精神や勇気の精神、キリスト教的人間像の育成や、多民族国家として人種的融和が強調されています。
 ヨーロッパ諸国:伝統的な文化や教養を重んじますが、キリスト教が長く普及したため、異教徒の記述が不完全です。
 アジア・アフリカ:ナショナリズムに重きを置き、発展途上国としての性格を払拭するために奔走しています。ただし、植民地時代の影響が残り言語的な統一が為されていない国も多く、大きな阻害要素となっています。
 日本:韓国・中国様のご機嫌に配慮しなければならないため、日本は極悪非道な侵略を行った悪の大国であったと書かねばなりません。自国の初代総理大臣を暗殺した人間を英雄と讃えるといった驚愕の記述があったり、「新しい歴史教科書」が朝鮮半島の位置を「日本に向けて大陸から一本の腕のように突き出ている」と書いただけで、
 (「新しい歴史教科書」が)19世紀後半の東アジア地図を用いた説明で、朝鮮の位置を「日本に向けて大陸から一本の腕のように突き出ている」と書いています。これは侵略と支配の責任を被害国へ転化する叙述であり、中学生に朝鮮への根拠なき偏見を与える極めて作為的な説明です。

 ここまでひどい!「つくる会」歴史・公民教科書 ()内は教授が追記
 と抗議がきたりします。

 北朝鮮:偉大なる首領様を讃え、反米反韓を煽るための教科書です。
 朝鮮の歴史教科書は、祖国を救うために生まれた偉人である金日成の生涯を綴っています。世界平和のために日々奔走し、世界征服を狙う悪の帝国である米国や愚かな指導者に率いられている韓国を打倒するために日々闘争なされたのです。
 偉大なる首領金日成大元帥様におかれては、全世界の自主化を実現するために、米帝をはじめとする帝国主義者の侵略と戦争政策に反対し、世界平和と独立を守護するための闘争を賢明に導かれた。
 偉大なる首領様におかれては、世界の平和と独立を守護するために、朝鮮半島と世界のいろいろな地域を核兵器のない非核地帯、平和地帯につくりあげる問題を重要なこととして提出され、その実現のために、世界各国の人民闘争を積極的に支持声援するようにされた。
 また、わが国に訪れる数多くの国家首班や代表団、個別的人士に会ってくださり、反戦、反核、平和のための闘争で生じる原則的諸問題を明らかにしてくださったり、彼らの闘争を鼓舞された。そして、わが国の代表団を派遣され、これと関連した対外活動を積極的に繰り広げるようにされた。
 偉大なる首領様におかれては、一方、反帝自主、平和、親善のための国際会議や世界青年学生祝典の成果のために、積極的な活動を繰りひろげられた。
 
 偉大なる首領金日成大元帥様の革命歴史 第10節、全世界の自主化を実現し、帝国主義者たちの反社会主義的策動を叩き壊すための闘争
 話の流れにもよるのですが基本的には改行ごとに「偉大なる首領様」という言葉がはいりごく自然に国民の父である首領様を崇拝するようになっています。また、「偉大なる首領様」の別バージョンとして「偉大なる首領金日成大元帥様」「敬愛なる首領様」などがあります。

 北朝鮮の教科書の傾向は数学や音楽・国語にも及んでいます。
 「敬愛する父、金日成元帥が誕生され、幼い時期に送られ革命の大きな志を育まれた由緒深い万景台に学生336名が見学に行きました。バス1台に48名ずつ乗ったとしたら、バスは全部で何台でしょう」
 人民学校4年の算数

 「人民軍のおじさんたちが、ある戦闘でオオカミの米国の奴らを265人も殺しました。残りの157人は生け捕りにしました。初めにオオカミの米国の奴らが何人いましたか?」
 人民学校2年の算数

 「南朝鮮のある農民は、飢えている家族たちを当座食べさせて生かせるために、高利貸業者に3万ウォンを借りてきた。この悪どい高利貸業者は4年後に年利10割の返金を求めてきた。貧しいこの農民はいくら払わなければならないか」
 高等中学3年の代数
 この手の北朝鮮の問題は以前に一部で評判となって、テレビ放映されたりZAKZAKにも掲載されたので、知っている人も多いかもしれません。

 ●海外の教科書から見た日本
 20年ほど前、経団連の招待で日本に視察に来たフランスの新聞記者が「日本では伝書鳩を通信手段として使うらしいが、我々も鳩は手に入るのか」と尋ねたことがあったそうです。 いくらなんでも戦後になって伝書鳩はありえないと思うのですが、サムライやニンジャと同列の幻想として語り継がれているのかもしれません。

 隣国でも誤解は当然あって、韓国人を日本に連れてきたときに一番困るのは、「銭湯に連れて行ってくれ」と頼み込まれることだそうです。どうも韓国では日本の銭湯は混浴という知識が広まっているらしく、そのためそれを楽しみに日本にくる人も多いのだとか。

 EUの外交官ウィルキルソンが、西欧諸国の高校生意識調査で日本のイメージについて回答を求めたところ、「日本は中国の一部である」という回答が多数出て衆議院会議でも取り上げられました。他には、日本はトルコの隣国だとか日本は南半球にあるという回答があったそうです。
 さらに第二の、知日派をもう少しつくることが必要であろうというお言葉でございますが、全くそのとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、およそ日本のことは知らない。高校の生徒に対していろいろなアンケートで調べましたときに、ECの国におきましても、アメリカでも、日本は中国の一部分であるというふうな回答がはね返ってくるという例が非常にございます。それから同時に、イメージがまだ非常に古いイメージでございまして、現在の日本がどういう経済であり、どういうふうな社会情勢であり、どういうふうな労働の状況であるかという問題についての適切なる解説がもっともっとなされなければならないと思います。経済の問題だけが前に出ておりまするけれども、それと同時に、いま申し上げました広い意味における日本の社会状況、文化の段階、そういうものについての解説をあらゆるルートを通じて、あらゆる方法を尽くしてやっていかなければならないと考えております。

 衆議院会議録情報 第096回国会 商工委員会 第7号
 ▼戦前の外国教科書における日本
 日本に関する外国の記述は、戦後と戦前で大きく異なります。大まかに言えば、戦前の日本は独特の文化が奇異に見られ、天皇中心史観もまたキリスト教との相違からか理解しがたいものであったため、誤解された記述が多く存在します。
 日本では紙の原料になる植物が重要で、紙はほとんどあらゆるものの原料になる。家には紙製の壁があり、人々は紙製の帽子を被り、紙のこよりが紐の代用となる。ハンカチの代わりをなすのはふところ紙であり、その上衣服や履物に至るまで紙で作られる。さらに日本に多い植物は竹である。これは草の一種で、その茎の空洞性を利用して、大は家の建築材から小はウチワまでさまざまな用途がある。竹のスクリーン、竹の帽子、そして水道管、ガス管にも使われる。

 イギリス『世界地理』中学校用 1937年
 確かに、日本は紙の文化が発展していますが、何でもかんでも紙で作られているわけでは勿論ありません。竹の水道管というのはどうやら実在したようですが、ガス管のような危険なものまで竹で作るというのはちょっと無茶です。一般的ではないことを表面だけ見て一般的だと判断されているようですが、これでもドイツの教科書に比べればかなりマシなほうです。
 仏教が一般に肉食を禁じてきたため、米と魚が日本人の常食を形成する主要な要素となった。この米をはじめ、茶・竹など経済的な植物はみな南方からもたらされたものである。それとともに農民は米の神を崇拝し、同じく神聖化された茶を飲む場合の儀礼(茶の湯)も伝わった。日本は火山地帯で温泉が豊富にあり、それは竹の筒によって遠くから家のなかまで導かれ、毎日暑い湯に入浴する慣習を発展させてきたのである。

 ドイツ『地理学教科書』高校用 1932年
 肉をあまり食べず米と魚が常食だったのは事実ですが、仏教によってというのは違いますし、それに関する儀式の解釈も変です。深く調査をしたりせず表面上だけで判断しようとするとこのように珍妙な解釈になるというよい例でしょう。
 しかし、これがただのいんちき本なら笑ってすませれますが、教科書でそれをやってしまうのが驚愕!

 ▼戦後の外国教科書における日本
 まあ、戦前は東洋のちっぽけな国にわざわざ綿密な調査をするまでもないと判断されても仕方がありません。日露戦争でロシアを破った日本は世界的にも名を広めていきましたが、それでも欧米からは遠い遠い国の一つでしかなかったのですから。
 しかし、戦後になっても奇妙な日本像はしぶとく残っており、1975年のスウェーデンの教科書には「日本の代表的工業の一つはマッチの生産である」と書かれたり、1982年のインドネシアの教科書では、「日本の大都市の一般的な交通手段として人力車があげられる」などと書かれています。
 この手の勘違いは特別ではありません。しかし、進駐軍が日本に滞在したアメリカにおいても意味不明な記述が存在するのは何故なんでしょうか?

 小説家群ようこさんのエッセイ「アメリカ居すわり一人旅」では「日本人は朝起きるときに父親がドラを鳴らすんだよな」という意味不明な勘違いをしているアメリカ人が登場します。まあ、エッセイは面白おかしくするために脚色されている可能性はありますが、実はこれ、当時のアメリカ教科書を見るとあながち脚色とも思えないのです。
 日本人が入浴を好む風習は、家屋のなかには冬には火鉢以外には体を温めるものが何もないことから発達したものである。また日本人が公衆浴場を利用するのは水と燃料費の節約につながるからである。外国人には到底耐えられないほどの熱湯の中に、日本人は10分以上もじっと動かずに浸かっており、それによって心身のリラックスを図るのである。

 アメリカ『世界の隣人たち』1971年
 日本人の好む場所の一つは公衆浴場である。例えば東京の住宅の多くは浴室を持っていない。そして日本人は熱湯に浸かるのを好むし、公衆浴場は46℃もの熱い湯が得られる数少ない場所だからである。浴場には様々なことがそこを利用してなされる。
 入浴する人々は誰でもそこにゴシップにふけるし、商人はそこで取引を行い、議員候補者はそこで票を得ようとして運動する。日本の公衆浴場は社会的なコミュニケーションの場としても欠くべからざるものといえる。

 アメリカ『東半球の人々』1977年
 日本人も知らない銭湯の恐るべき歴史!素っ裸で選挙活動をしたり商売をしなければならない(証書はどうするんだろう・・・)とは日本の議員や商売人も大変ですね。恐るべしアメリカの超絶解釈。どう頭をひねったらこうなるのでしょうか?執筆者の脳内が気になります。
 ちなみに、アメリカの教科書は多くが選定か自由教科書制なので、日本などに比べてかなり自由に書くことができます。そのため、このような教科書が出てくるのでしょう。群れようこ氏のエッセイに出てきた勘違い親父の発言も、こういった教科書による知識だったのかもしれません。
 もっとも、シェーしか取り得がない、とある出っ歯の人はおフランス帰りなのに英語でミーですから、日本人だって笑えません(こっちは漫画ですが)。

 ▼公害大国ニッポン
 戦後荒廃の中から日本が急速に発展したのは、外国諸国からしたら奇跡以外の何者でもありませんでした。その理由もはっきりしなかったため、当時の欧米教科書ではその奇跡を説明するために「日本は低賃金で長時間労働をさせている」という理由を作り上げました。さらに、日本人の運動化が公害問題を世界中に宣伝した結果としてか、非常に大げさな公害問題も語られることになりました。
 東京に住む人々は一年のうちに青空を見ることができる日数は片手で数えられるほどしかない。ある日本のテレビ番組で「東京にないものは?」というクイズに対する正解は空であった。また、大阪-神戸間の電車に乗る人々は神崎川の鉄橋を渡る時、漂ってくる悪臭を避けるために必ずハンカチを鼻で覆うのが常である。
 (中略)
 日本の都市の街角には大気の汚染度と汚染度を示す電光掲示板が立てられていて、人々の注意を促す。東京の交通巡査はいつも酸素マスクをつけて街頭に立っているし、町々にはコーヒーやコカコーラを売るスタンドと並んで酸素を売るスタンドも見受けられる。

 ニュージーランド『日本の近代化―その経済的発展』高校教科書 1977年
 彼らの見た日本は一体どこの日本なのでしょうか?
 この手の公害=ガスマスクのイメージは、映画の影響をそのまんま教科書にまで展開いるように思えます。この記述の元ネタは、どうやら冬に感冒マスクをつけていたのが誤解されて広まったようです。一度見ただけのものをその国の全てだと思う外国ニズムはここでも健在。
 日本の急激な経済的発展は環境と結びつくたくさんの問題を生み出した。大気は汚染され、ゴミは処理されずに山のように積まれ、都市の騒音は年々ひどくなるばかりである。日本人はこれらを総称するのにコウガイという新しい言葉を使うに至った。
 (中略)
 このような状態が続くとどうなるのか?日本政府は1985年の都市生活の恐るべき未来像を人々に次のように示している。
 母親たちの大集団が公園でデモをしている。プラカードには少なくともつきに一回私たちに新鮮な野菜を与えよと記されている。
 学校では人口過密のため、一つの机に少なくとも二つずつ並ぶようになった。中学や高校ではみな夜間授業を始めたが、それでもまら全部を収容しきれない。ゴミは道の両側にうずたかく積まれている。川などに投棄するぐらいではとても間に合わないのである。
 電力も不足しがちで午前8時から午後6時までは停電である。水道の給水も朝夕3時間だけに限られる。レストランでは一杯の水がブドウ酒と同じ値段になった。雨の日には水を集めるためにバケツをもった男女が道に溢れる。サラリーマンはふだんデスクの中に水着をしまっておき、雨の日にはそれを見て外で水浴するのが一般的になった。
 こうしたことは東京だけではなく、問題解決をうまくやらないと世界各地の大都市でも起こるかもしれない。恐ろしいことである。

 カナダ『人々とその文化』1975年
 確かに当時の公害問題は大きな社会問題でしたが、いくらなんでも大げさすぎです。これは、世界中の近代化がものすごい勢いで進み、今までほとんど存在しなかった公害という得体の知れないものが出現したことによる混乱を表しているでしょう。

 これらの教科書の問題は、基本的に人は成人した後に教科書が変わっても読み返さないということです。もう学生を卒業した人々は、今更中学・高校の教科書なんて読み返しませんよね。これらの記述は古めなので現在は修正されているものも多々あるでしょうが、修正される機会はかなり少ない。つまり、真実として記憶に残るのです。こういった奇妙な教科書を読んだ1970年代に学生だった人間は、現在40〜50代ほどでちょうど企業の重役クラスとなっているので、こういった歪んだ日本像を持ったままの人間が企業を動かしていると考えると結構シャレにならないかもしれません。


・北朝鮮の教科書はいろいろな意味で凄いです。
・ミーはおフランス帰りですが英語です。
・日本の主要産業がマッチで、主な交通手段は人力車です。
・日本人は紙や竹で何でも作れます。
・日本人の主要連絡手段は伝書鳩です。
・日本の銭湯は混浴です。
・日本の公害は世界最悪です。
・外国人は第一印象を教科書に載せます。
・これらの記述で勉強した人々は現在重役クラスです。


参考文献
世界の教科書は
日本をどう教えているか

北朝鮮の歴史教科書
アメリカの歴史教科書が
教える日本の戦争
ここまでひどい!「つくる会」歴史・公民教科書
アメリカ居すわり一人旅
韓国・反日小説の書き方
おそ松くん
国会会議録検索システム
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